スイス・チューリヒ中央駅からスイス南部に向かう路線で約1時間半、列車はイタリア語圏の地域ティチーノ州に入る。ドイツ語圏の地域からイタリア語圏に入ると、車内アナウンスの順番も替わる。ドイツ語、フランス語、イタリア語、英語の順から、イタリア語、ドイツ語、フランス語、英語に。車窓から見える街並みも、どことなくカラフルだ。
スイスの人口は770万人。ドイツ系が64%、フランス系20%、イタリア系7%、ロマンシュ系1%。言語や文化、風習など、それぞれ異なるものとなっている。
ティチーノ州の州都はベリンツォーナ。2000年に「ベリンツォーナ旧市街にある三つの城と街を囲む城壁」として世界遺産に登録された。ベリンツォーナはアルプス山脈の南側の入り口に位置し、イタリアとヨーロッパをつなぐ要衝として、ローマ帝国時代から戦略上重要な拠点であった。三つの城のうち、一番大きな城「カステルグランデ」は13世紀に建てられたものだが、「カステルグランデ」の岩場には4世紀ころ、すでに要塞が存在していた。現在、岩場の中にはエレベーターが設けられ、労することなく城中に入ることができる。「カステルグランデ」には二つの塔があり、一つの塔は観光客に開放されている。最上階にある部屋から下を眺めるとベリンツォーナの街並みを一望でき、少し視野を上げると、手前に「モンテベッロ城」、右奥に「サッソ・コルバロ城」を見ることができる。
街の中心部から小道に入り、坂道や階段を20分ほど登ると「モンテベッロ城」に到着する。城壁が菱形になっているこの城は、堀や跳ね橋が設けられた堅牢な要塞。第三の城「サッソ・コルバロ城」は15世紀に半年間という短い期間で建てられた、三つの城で最も高い場所にある城だ。
城壁の縁に立ち、さわやかな風を受けながら、オレンジ屋根の街並みと深い緑の山を見渡せば、要塞都市ベリンツォーナの歴史に思いをはせることができる。
ティチーノ州には、州最大の都市ルガーノや国際映画祭で有名なロカルノ、三畳紀の化石が数多く発掘され2003年に世界遺産となったサン・ジョルジョ山など、見どころあふれる観光地がいくつもある。
湖畔には、ほかの地域にはない亜熱帯性の植物が見られ、あいさつの言葉は「ボンジョルノ」、「チャオ」。食べ物はピザにパスタ。ティチーノ州は、まさにスイスの中にあるイタリア。日本人にはあまり知られていないが、ヨーロッパでは昔から人気のあるリゾート地だ。アルプスの大自然を堪能したあと、温暖な湖畔のリゾートを満喫できるなんて、なんとも贅沢な場所なのだ。
一つの国でいくつもの文化や風習が存在するミニヨーロッパと称されるスイス。多くの観光地をめぐることが好きな日本人にとって、もってこいの素晴らしい国ではないだろうか。
世界遺産「ベリンツォーナ三つの城と城壁」-スイス・ティチーノ州
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