「戻れるのはずっと先」。福島県富岡町の会社員早乙女政広さん(46)は先月17日、避難所から一時帰宅し、周辺の景色をビデオカメラで撮影した。その後、福島第1原発から20キロ圏は警戒区域に指定され、立ち入りも許可がなければできなくなった。海から離れた自宅近くの風景は震災前と変わらなかったが、不気味な静けさを肌で感じたという。
自宅周辺を撮影したのは、政府の警戒区域指定の5日前だった。「一時帰宅があるといっても、いつになるか分からなかった。帰るのは今しかないと思った」と早乙女さん。
急きょ用意した防護服を着て、車で富岡町に入った。人影がない町並みに違和感を覚えたが、ふるさとに戻るのは1カ月ぶり。「ただ懐かしかった。みんなにも見せてあげたい」。そう思いながらカメラを回した。
早乙女さんは町内に約1時間半滞在。「目に見えない恐怖」から、それ以上滞在しようとは考えず、自宅からは最低限のものしか持ち出せなかったという。
移動中には、放浪する犬や牛の群れ、大きな地割れを目撃、一時帰宅中と思われる住民の車数台と擦れ違った。ただ、田畑など周囲の風景はほとんど変わりなく、同町の花見の名所「夜の森公園」では、桜のトンネルがちょうど満開だった。
「あきらめ半分、期待半分」。早乙女さんは心境をこう表現した。「時間が止まった町を目の前で見たら、元の生活に戻るにはしばらく無理と思わざるを得ない。でも、生まれ育った土地はきっと立ち直ると信じて、前を向いていかないと」と力を込めた。
警戒区域の9市町村への住民の一時帰宅は、川内村など3市村で15日までに行われる。富岡町など残る6市町については、今月中旬から順次実施される見通し。ただ原発事故収束の見通しはなく、自宅に戻れるめどもたっていない。【住民撮影】
警戒区域、指定前に住民が撮影-福島・富岡町
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