新型コロナウイルスの第2波に見舞われた北海道で、最大のクラスター(集団感染)となった札幌の介護老人保健施設「茨戸アカシアハイツ」。90人以上が感染し、入所者11人が施設内で死亡しました。施設内で何があったのかを3回にわたり描きます。
1回目は「絶望的でどうしたらいいのか分からなかった」と語る医師の証言です。
【札幌市の会見 4月28日】
札幌市保健所 山口 亮 部長:「介護老人保健施設茨戸アカシアハイツにおいて、新型コロナウイルス感染症の集団感染事例が確認されましたのでお知らせいたします。新たな患者は15人の発生がありました」
増え続ける感染者。
【別の日の会見】
札幌市保健所:「これまで50人です」
入所者と職員90人以上が集団感染した北海道内最大のクラスター。
茨戸アカシアハイツ。
感染した入所者は当初、病院に運ばれず施設内に留め置かれました。
施設関係者:「みんなが軽症じゃなく、重篤の方もいましたよ」「ご飯だって今、1日2食になって…」
感染した11人は家族に会うこともできず、施設の中で息を引き取りました。
残された遺族は…
遺族:「見殺しにされたような、そんな気持ちです」「まさに命の選別じゃないですか」
現場に支援に入った医師が見たものとは?
支援に入った医師:「ちょっと絶望的でどうしたらいいのかわからず、めまいと息苦しさで動けなくなった」
感染で隔絶された茨戸アカシアハイツ。何が起きたのか、その真相に迫りました。
【北海道庁 5月25日】
鈴木直道北海道知事:「緊急事態宣言が解除されたとしても、新型コロナウイルスがゼロになるわけではありません。この戦いは当然続く」
私たちの暮らしを突然襲った新型コロナウイルス。5月29日までに北海道内では、1066人が感染し、86人が死亡しました。
病院や介護施設などで集団感染も発生。その中で最も多い92人の感染が確認されたのが、札幌市北区の介護老人保健施設・茨戸アカシアハイツです。
川が穏やかに流れゆったりと時を刻む場所で、100人ほどの高齢者が暮らしていました。
介護老人保健施設とは、入院していた高齢者が自宅に戻るためにリハビリなどを行う介護施設です。
しかし実際は在宅での生活が困難で、より重度な介護に対応する『特別養護老人ホーム』への入所を待つ人が多いと言われています。
茨戸アカシアハイツの最初の感染者は、60代の女性入所者。4月18日に発熱し、呼吸困難となり24日に入院しました。PCR検査の結果、25日に陽性が確認されたのです。そして…
札幌市保健所 山口 亮 部長:「茨戸アカシアハイツにおいて、新型コロナウイルス感染症の集団感染事例が確認されましたので、お知らせいたします」
Q「茨戸アカシアハイツはクラスターと考えていますか?」
札幌市保健所 山口 亮 部長:「クラスターと考えております」
70代から90代の入所者14人に感染していることが分かりました。
これは、アカシアハイツのような介護施設で感染者が発生した時の国の指針です。重症化するリスクが高いことから、原則入院することを求めています。
しかし、14人はすぐには病院に搬送されませんでした。
医療支援のため、外部から施設内に入り診察をした医師が当時の様子を語りました。
大友宣医師です。
支援に入った大友 宣 医師:「私が最初に入った時には防護服を着ていきますが、かなり災害に似たような状況に感じた。看護師の手の割にケアをする人が多かった。その状況をどう打開するか考えなければならなかった。病状を把握する人員も、それを収集する人も限られていた」
施設で働いていた職員は…
職員:「酸素吸入しないと呼吸が苦しい人がたくさんいたりして、みんなが軽症じゃなく、重篤の方もいましたよ」
なぜ原則入院という国の指針にかかわらず、施設内に留め置かれたのでしょうか?
札幌市がアカシアハイツを運営する法人に送った文書です。
無症状の人や軽症の人は施設内で生活。状態が悪化した時、入院が必要か医師が判断し、市が入院先を調整するとしています。
未知の感染症の集団感染。現場は混乱しました。
支援に入った大友 宣 医師:「介護職員や看護職員は大変で、そこは危機的な状況。ちょっと絶望的でどうしたらいいかわからず、めまいと息苦しさで動けなくなった」
職員:「はっきりいって、(職員が)全く足りていないですね。本当に大変な時には、日勤から続け夜勤に入った人もいましたし」
感染者の濃厚接触者として自宅待機になったり、休職したりする職員が相次ぎました。残された職員は懸命な介護を続けました。
職員:「ご飯は今、1日2食になっていて職員がいないから配れない。お風呂ももちろんないし」
「コロナになった時点で、清掃業者も入らなくなった。今までは掃除の業者も入ってくれるところはあったけど、一切入らないから汚いし」
「汚れているシーツとかも一切替えてあげられなかった」
集団感染の発表から2週間余りたった5月12日、やっと入院が始まりました。しかし、11人が施設内で命を落としました。
このような事態に不信感を募らせる遺族がいました。そこで見せてもらったのは…
記者:「これは何ですか?」
遺族:「これは資料。施設からの経過表。経過観察みたいな…」
茨戸アカシアハイツから取り寄せた介護記録です。男性の父親は、医療機関を退院後自宅に戻るリハビリのため入所していました。新型コロナウイルスに感染。そこで感染し、亡くなりました。
遺族:「ちゃんと食べてるのかな?」
亡くなった父親:「わからない」
遺族:「食べてね」
父親がどのようにして亡くなったのかを知るために記録を取り寄せたのです。そこには最期の様子が記されていました。
遺族:「看護師、心肺停止を確認…」
【コロナといのちの選別 感染で隔絶された人々】"現場医師"「絶望的でどうしたらいいか分からなかった」 (20/05/30 18:05)
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