「自分の線」を描けるようになるまで10年かかったといいます。
北海道旭川市に住む、49歳のイラストレーターの男性。
その創作の舞台を北海道ニュースUHBのカメラマンが密着取材しました。
この日も大好きなバイクを走らせていました。
ふらっと立ち寄った先で、スケッチをしながらのツーリングです。
小川けんいちさん。旭川に住むイラストレーター。
心をくすぐるものが見つかれば、すぐ描き始めます。
「1ページ目となると、少し身構えますね」(小川 けんいち さん)
使うのは日付しか入っていない、日記のような本。ついに45冊目に入りました。
ときには似顔絵を頼まれることもあります。
「も~似てる!」
「まだ輪郭なんだけど・・」
「おぉぉぉぉ!」
「気になるぅぅ!!」
「結構見てくれるからいいっすね。グッとこう見てくれるからね」
「もう初めての経験なんで。緊張しますね」
長年お世話になっている画材や額縁の専門店でも。
「うん、そう、美人に描いてくれてたし。あっはっはっはっは」
そして、このモデルは僕です。初めて小川さんに会った日に描いてもらいました。
みんなを笑顔にさせる不思議な人だと思った僕は、彼を取材しようと思いました。
「小川けんいちさんの世界」をご紹介します。
小川さんの職場はこんな感じ。雑然とした彼の机からいろんなアイデアも生まれています。
店の看板や地元旭川の有名菓子店のパッケージ。
旭山動物園のイラストには、びっしりと動物たちを描きました。
気になる人に出会うと、描かずにいられません。
2022年秋、北海道釧路市で小川さんの個展が開かれると聞いて、取材に向かいました。
会場の一角にはあの日記のような本が山積みに。
小川さんが描いてきたスケッチの数に、僕は圧倒されたのです。
釧路港の船に、飛行機の数々。
イラストレーターの小川けんいちさんは乗り物が大好きで、中でもバイクは生活の一部です。
2022年秋、釧路で初めて大きな個展を開きました。
「この額縁屋の、まぁ雑然としたもうごっちゃごちゃとしたものを私はいつか描きたくって…これいつか描いてやるぞ!って描いた絵です。これは実際、額縁屋のレジの上にこの絵が飾ってあります」(小川さん)
会場には大きさや形にとらわれない自由な作品が「小川ワールド」として展示されていました。
小川さんが愛用しているのが、この「マイブック」。
日付しか入っていない日記のような本です。
旅先で出会った何気ない日常や気になる人物を描いてきました。
マイブックは現在45冊目に突入。
人と出会うと、小川さんはすぐイラストにしてしまいます。
「人の特徴を上手くとらえているというか、タッチが凄く印象的だなと思いました」(来場者)
「描く、表現することの根源的な楽しさをずっと体現してる人なんだなぁと。それは本当に目からウロコでした」(釧路市立美術館 武束 祥子 学芸員)
釧路は小川さんの生まれ故郷。人生を左右するような出来事が幼少期にあったそうです。
「たいしたことないですけど、私が描いた最古の…なんか…絵って感じになってるんで」(小川さん)
小川さんが最初に描いた作品は、テーブルの裏にありました。
クレヨンのようなもので描いた…線です。
「おばあちゃんがワァ~って反応してくれたってことですかねぇ。まぁたいてい上手だね…ってよりはですね、え~それ描いたのぉって感じで受け入れてくれたっていう…そういうのは大きいと思いますね。それでどんどん…見てほしいから反応してほしいから出来れば喜んでほしいから、どんどん描いて見せるようになった」(小川 さん)
大学を卒業後、印刷会社でデザインの仕事をするサラリーマンとなりました。
30代前半絵を描いて勝負しようと独立しましたが…。
「どうやったら例えば有名になるのかなぁとかね、どうやったら上手く出来るのかなとか。そりゃぁ、ありましたよ。凄い考えた時期は。でも考えても上手くいかないんですよ」(小川さん)
17年前、マイブックを使い始めました。 最初のページには家にあった七輪を描きました。
「自分の線」が描けるようになったと思えるまでに10年ほどかかったといいます。
2023年6月。小川さんはイラスト教室を開きました。
「線を描いてみたいと思うんですよ。皆さん絵って線で描くでしょ?」
「元気がある線っての描けます?」
「次、集中した線、集中力があるみたいな。凄い集中してるの。真剣な感じの。別に決まりがないんで難しいと思いますけどね。どうだっていいんですよ。人によってそれぞれ全然違う線が出てきていますから」
「感情入れればね、いろんな線を描けるというところなんですね」
絵を描く前に気持ちのこもった線を描く。でも、教えるのはここまででした。
「こういうふうに描きましょうね、とやると皆が私みたいな絵になっちゃうんですね、それだと全く意味がないんで」(小川さん)
「私は3歳ぐらいのときだと思うんですけど、母が作ってくれたこのクマのぬいぐるみを持ってきました」
「思い入れがあるもの」を小川さんは一人一人に用意してもらいました。
「思い出して。これがなんで自分が思い入れがあるのか、あ~大切だなぁとかこうなってるのかなぁっていろいろ考えてず~と見たら思いが入りますから」
「で、その気持ちを線に込めてほしいんです」
みんなそれぞれに思いを込めて線を引いていきます。
生徒たち「こっちにつらいなあとか、苦しいなあって気持ち。こっちには楽しいとかうれしい、とか達成感」「色味で感情を表現できたら良いかなと思って」「6年間使って年季を表せたらよかった」
8月、旭川のこの日の最高気温は36℃。小川さん愛用のペンもちょっと暴走気味です。
「なんかもう。ペンの出がいいですね」
「ヘルメット脱ぐとなおさら何て言うんだろう、シ~ンとするじゃないですか。そこでこうなんか…まず落ち着いてその周りを見てみると『こんなとこに花が咲いていた』とかね」(小川さん)
暑かったこの日を閉じ込めたようなスケッチが完成です。
マイブックをポケットに。小川さんはこれからもバイクを走らせます。
「自分の線」を描けるようになるまで苦闘10年… 小川けんいちさんの世界とは? カメラマンが創作の舞台を密着取材 (23/10/22 16:00)
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