知床沖で観光船が沈没した事故から、まもなく1年です。
海上保安庁は4月、北海道東部の救助体制強化のため「機動救難士」を北海道釧路市に配置。
その訓練に密着しました。
ロープ1本を頼りに、要救助者をヘリコプターに吊り上げる隊員。
海難事故の際、機動力を生かして救助にあたる海上保安庁の機動救難士です。
4月、釧路航空基地に初めて機動救難士が配置されました。
函館市や沖縄県などから集まった9人の隊員は、十分な現場経験を積んだ潜水士の中から選ばれた精鋭です。
釧路市に機動救難士が配置されたのは、2022年4月の知床半島沖での観光船沈没事故がきっかけです。
当時、海上保安庁は全国9か所に機動救難士を配置し、出動から1時間以内に現場へ到着できるように整備をしていました。
しかし、北海道で配置されていたのは函館市の函館航空基地のみで、知床など北海道東部や北部の広範囲がカバーできない空白地帯となっていたのです。
釧路航空基地 上席機動救難士 神谷 高仁さん:「悔しさもあったし、他にもっとできることはなかったのかという思いが頭の中をよぎる。特に北海道東方海域は、海水温が非常に低いことが考えられる。迅速に活動できるよう日々の訓練、海難出動に備えていきたい」
救急救命や潜水の高い技術が必要とされる機動救難士。
危険な現場で活動するため、厳しい訓練を積み重ねています。
函館航空基地で行われていたのは、要救助者をヘリコプターに吊り上げる訓練です。
漂泊している船を想定し、狭いエリアに降下。
要救助者を固定し、素早くヘリコプターに吊り上げます。
訓練後に行われたミーティングでは隊長から厳しい指摘が。
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「なんで降りてこないのかな。障害物に触れられないの? 」
隊員:「蹴って中に入る? 」
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「早く入りたいんでしょう? 漂泊した船舶というイメージで訓練をしていたのであれば、粘っている間に船はいなくなる。そういうイメージをしないと」
隊長が指摘したのは降りるタイミングを躊躇したことです。
実際には船が動いている中で、一瞬を逃せば降りられなくなります。
函館航空基地 機動救難士 川村 大輔さん:「イメージを細かく突き詰めないといけない。高い訓練効果を得るためには、それが足りなかったかなと思う。海に降下する訓練だったので、その想定が足りなかった」
函館航空基地で機動救難隊を率いる、隊長の河村隆さん。
特殊救難隊の隊員を11年間務め、現在は隊長として指導にあたっています。
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「自分たちがどう考えて対処するか、考える能力を伸ばすことを意識。自分たちや周囲の安全管理をしながら、現場で対応できる能力を身につけるよう、自分の経験を踏まえて隊員に伝えるようにしている」
さまざまな状況が想定される海難現場に備え、訓練は多岐にわたります。
函館市の戸井漁港での潜水訓練。
月に2日から3日ほどのペースで行われています。
訓練中の隊員:「集中、集中! ファイト、ファイト」
立ち泳ぎの訓練では10kgの重りを抱え、5分間体勢を維持しなければなりません。
函館航空基地 機動救難士 重金 勇作さん:「きついです。体の出ている面が多くなるほど浮力がなくなるので、最後はダッシュしているような感じ」
転覆した船に進入し取り残された人を救助することを想定し、まとわりつく漁船の網をくぐり抜け、狭い入口に見立てた障害物を突破していきます。
訓練中の隊員:「意識あり? 」
訓練中の隊員:「意識あります」
要救助者を発見したら健康状態を確認し、マスクやボンベを装着。
その後、進入してきたルートを要救助者を抱えながら戻ります。
函館航空基地 機動救難士 川村 大輔さん:「想定しているのは転覆した船の中なので、船が沈んでしまう可能性がある。非常に危険な作業」
隊員が海に飛び込んでから救出が完了するまで約25分。
訓練後には、暗い転覆船の中で道標となるロープから手を離してしまったことや、体勢のコントロールについて厳しい指摘が。
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「迅速性、安全性、連携、全部できていない。適正ウエートなの? 」
隊員:「ちょっと軽かったかもしれないです」
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「行きからずっと浮いていた。自分の体勢維持もできない者が要救助者を確保しながら、人を助けてバディのケアをするなどできるわけがない。絶対無理だ」
厳しい指導をする隊長の思いは。
函館航空基地 上席機動救難士 河村 隆さん:「情報が入って現場に着くまでの時間は、要救助者もずっと耐えている状態。1分1秒でも早い救助が求められている。隊員自身の安全をしっかりと確保した上で、能力と迅速性を向上させていくのが重要」
北海道の海の安全を守る。機動救難士は、きょうも厳しい訓練を重ねます。
“知床観光船沈没事故”から間もなく1年 北の海の安全対策を強化…海難救助の最前線 「機動救難士」に密着 (23/04/15 11:30)
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