北海道知床半島沖で、観光船「KAZU 1 (カズワン)」は、なぜ沈没したのか。本格的な調査が今後行われますが、考えられる原因は何なのでしょうか?
井戸 和也 記者:「天災なのか? 人災なのかどちらで考えていますか?」
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「天災と人災と言い方をすれば、やはり人災」
海底約115mに沈没したカズワン。海難事故の調査や原因究明に詳しい神戸大学の若林教授は、「人災の可能性」が高いといいます。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「一番の問題が『出航したこと』が問題で、その判断が厳しいものであった」
事故当日は強風注意報に加え、出航の20分ほど前には、波浪注意報が出ていました。そして、波の高さは正午ごろを境に急激に変わり、その後、3メートルを超えました。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「上から滝が降ってきているような状態。小型船舶は、波3mではいけない。通常は無理。無茶というよりも無理」
カズワンから118番通報が来たのは、4月23日午後1時18分、その時の内容が「カシュニの滝のすぐそば」「船首が浸水」「エンジンが使えない」というものでした。
そして、午後2時ごろ「30度傾いている」と運航会社へ連絡がありその後、消息を絶ちました。なぜ、カズワンの船首部分に浸水が始まっていったのか?
これは、カズワンを上から撮影した写真です。船首部分にあるハッチは、運航中は使わない、錨やロープを船底のスペースに入れるための扉です。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「ロックをしていなかったら、揺れて風があって水が入ってきたときに、(ハッチが)開いてしまう可能性や、ハッチから浸水する可能性がある。波をかぶるたびに水が増えていく、どんどん前が下がっていく状態で、さらに水がたまっていく状態が考えられる」
さらに、後部デッキからの浸水もあり得るといいます。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「(カズワンの模型を持ちながら)よく見ると、こちらの客室の高さと、こちらの客室の高さはこちらの方が低くなっている。水が入ったら低い方に行くから、さらに水が入っていき、船首が沈むことも考えられる」
知床遊覧船の事情に詳しい人:「『バルバスのところに穴が開いているぞ』『水ぽたぽた垂れているぞ』って言っている人もいた、『危ないから運航させないほうがいい』と言っている人もいた」
別の観光船会社の船員:「(Q:亀裂はどこ?)船首の2mくらい後。真ん中。もちろん水が出ていましたから、3月の24~25日くらいかな」
事故前のカズワンを知る人たちからは、事故の約1か月前、カズワンの船首から、2mほどのところに亀裂があり、水がぽたぽたと垂れていたといいます。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「その話が本当だったとしたら、こんな位置から水が出てくる船には、恐ろしくて乗れない。船底に水が入る原因はあってはいけない。(船を)陸上に揚げているから、中から水が出てきているが、(水に)つけてしまうとその穴から入ってしまうか。どんどん水が入って、沈没するしかない状況。実際に船体を見てみないとわからない。断定的なことは言えない」
4月23日午後1時18分の通報時に告げられたのは、「船首の浸水」と「エンジンの停止」。
若林教授は、エンジンが先に停止した可能性もあるといいます。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「他の要素がなかったとすると、エンジンが先に止まったのであれば、動けなくなると、3mの高い波では、横波を受けて海水をすくい上げるようになる。揺れがひどくなりすぎて、どんどん水が入ってくる状況になった可能性も考えられる」
エンジンが停止するとしたら、原因は何が考えられるのか?
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「最初に考えられるのは、潤滑油(エンジンオイル)。潤滑油(エンジンオイル)がちゃんと回っていたのかどうか。(オイルを)吸えたり吸えなかったりになったかもしれない。(高波で)ものすごい傾きになる。連続して(オイルを)吸えないと潤滑油(エンジンオイル)の問題もある。一般的な小型船舶のディーゼルエンジン構造からあり得る」
カズワンのエンジンオイルについて、知床遊覧船の元従業員はこんな指摘をしていました。
知床遊覧船の元従業員:「オイル交換を、事故前日に豊田船長がしている。(豊田船長が)『オイル交換を一度もしていない』と。『それはダメだ』と言った。(豊田船長が)『もうオイル交換をしないといけない』と事故前日に焦っていた。終わったのかなと見に行ったら、心配で、豊田船長は『何とか終わりました』と。今までは、業者に頼んでいた」
2021年1月に、ベテラン船長らが退社をしてから、一度もオイル交換をしていなかったというカズワン。
さらに、これまでは専門業者に頼んでいたオイル交換を、豊田船長と新人の甲板員の2人で、事故の前日に行ったといいます。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「試行錯誤的に(オイル交換を)やってみたというのであれば、手順を間違えてエンジンオイルが回らなくなった可能性もあるし、エンジンオイルはフィルターをかけて、必ず"こして"から使うので、フィルターの取り付けが悪いとかで、流れる量が制限されたことも」
若林教授は、事故前に船に何らかの異変が起きていたはずだと考えています。
神戸大学 海洋政策科学部 若林 伸和 教授:「急にエンジンが止まったり、浸水だとやっぱり少しずつ浸水するから、早めに分かっていたはず。『じゃあどうすればいいのか』と考えないといけない。今回の船長がそれを感じたのかはわからないが、なんらかの異変を感じ取れないといけない。それが船長の技量であり、必要な知識である」
カズワンは5月24日にも作業船の上に引き揚げられる予定です。何が悲劇を起こしたのか、事故原因の調査が本格化していきます。
なぜ浸水したのか 「天災と人災と言い方をすれば、やはり人災」 専門家と事故原因探る 観光船沈没1か月 (22/05/23 20:20)
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