今、シニア世代の起業が増えています。新たに起業した人のおよそ40%が50代以上だというデータもあります。マイナー楽器の販売や修理をするお店を開業した男性に話を聞きました。
■マイナー楽器 特殊な技術で修理
部屋一面にずらーっと並ぶ、何やら古めかしい楽器の数々。世界の民族楽器を集めたショールーム。運営するのは、横浜市に住む井口敦さん(73)です。
「(他の)人がやっていない分野を掘り下げれば、“ブルーオーシャン”という言い方もありますけれども」
井口さんは64歳の時、ここでマイナーな民族楽器の修理・販売という何ともマニアックなお店をオープン。
それが今や、全国各地から多くのお客さんがやってくる人気店になりました。
この日、井口さんの元に一人の女性が訪ねてきました。持ち込まれたのはハープ。よく見ると大きな亀裂が入っています。
ハープの修理を依頼
大石千絵さん
「木工的な修理ができる方が、なかなかいらっしゃらなくて」
色々なメーカーに問い合わせたものの、マイナーな楽器のため修理を引き受けてもらえず、行きついたのが井口さんの工房でした。
「長年弾いていた楽器って、弾いていた人にとっては大切なもので、なんとか直したい」
愛着のある楽器を少しでも長く使えるようにと、修理を引き受けた井口さん。しかし、それは簡単な作業ではありません。
「いずれにしろ全部弦を外して」
すべての部品を解体し、板を取り替える大規模な修理。木工の技術が必要だと判断した井口さんは、隣の工房で働く木工職人の協力を得ながら作業を進めます。
木工職人 志村誠さん
「ここにのりを貼って、その上に(板を)かぶせてクランプで挟み込む。いきなりギューって締めてしまうと、そこだけ浮いちゃったりする。そうなるともう最初から(やり直し)」
井口さん
「ここは非常に重要。ハープ製作の肝みたいなところ」
マイナー楽器の修理は、特殊な知識や技術が必要なうえ、採算が合わないこともあるといいます。それでも修理を引き受ける井口さん…。
「演奏者が音楽を楽しめれば一番良いんじゃないか」
そんな井口さんは、マイナー楽器の演奏者の間ですっかり有名人です。
大石さん
「仲間に『困った』って言われたら井口さんを紹介して、皆さん喜ばれている」
ここはマイナー楽器の“駆け込み寺”となっていました。
■53歳で脱サラ シニア起業決意
実は井口さん、以前は東芝で資材の輸入を担当するサラリーマンでした。それがなぜ、第二の人生に楽器店の開業を選んだのでしょうか?
「アメリカに3カ月ほど長期(語学)研修に会社から派遣され、アパラチアン・マウンテンダルシマーというアメリカの民族楽器があって」
語学研修をきっかけに出会った民族楽器に一目惚れし、演奏を始めておよそ50年。
当時、日本にはこの珍しい楽器を修理できるお店がなかったといいます。
「(楽器に)不具合があると本国まで送り返して修理するのはとても大変。できることは自分でやったほうが解決するのに早いし安い」
この出来事をきっかけに起業を決意すると、53歳で東芝を退職。その後も別の会社で働きながら夜間の専門学校に通い、64歳の時、楽器店を開業しました。
■マイナー楽器 見事に修復
この日、井口さんの元に日本ではほとんど見られない珍しい楽器が持ち込まれました。
大きな衣装ケースに入れられた楽器は「ハーディガーディ」。中世以来、ヨーロッパで演奏され宗教音楽において重要な役割を担う楽器です。
「弦交換をしてこの綿を詰めたりして、音を出やすくして松ヤニを塗ってあげれば一応ちゃんと動くんじゃないかなと思われます」
とはいえ、マイナー楽器の中でも特に珍しい楽器の修理は一筋縄ではいきません。
依頼者
「一応これが説明書らしいんですけど…」
井口さん
「しかしこれは何語でしょうね…フランス語ですか」
参考になるのは、海外の資料のみ。さらに「ガット弦」と呼ばれる、羊の腸から作られた弦は数カ月かけてフランスから取り寄せる必要がありました。
こうした海外とのやりとりは、もちろんすべて英語です。
「(英文のメールで)向こうから出荷された楽器が無事届きましたっていうことで(連絡した)」
サラリーマン時代に輸入の仕事を任されていた井口さんにとって、海外から部品を取り寄せることはお手のもの。
マイナー楽器の修理ではよくあることだといい、その都度、臨機応変に対応してきました。
8年前の起業初年度は114万円の売上でしたが、今や10倍近くの1000万円に。
「もうリタイアしてから年金もいただいているしね、(お金のことは)あんまり気にならない。お客様にも喜んでいただければ、それでいいんじゃないかと思って」
■主婦目線で新発明
今、井口さんのように起業するシニア世代が年々増加しています。おととし、新しく作られた会社のうち、50代以上が代表を務める割合は、なんと43.8%。中には新たな発明をする人もいます。
こちらは2人の子どもを育てる主婦の村松由美さん(58)。日々のストレスから生まれたアイデアをきっかけに“ある商品”を開発し、54歳で起業しました。
その商品がこちら。ポリストーンと呼ばれる、石と樹脂でできた白くて四角いもの。一体何に使うのでしょうか?案内されたのはキッチン。
「きょうはミネストローネと生姜(しょうが)焼きを作ります」
料理中、一度使った調理器具の置き場所に困る!なんてあるあるも…。
「これをいったんここに持ってくるんです」
この商品があれば、他の物を汚すことなく調理器具を一時保管することができるのです。
「以前はこういうところに挟んだりしていたんですよ。ちょっとずらした時にバンッて落ちちゃったんです」
■特に苦労した「特許取得」
主婦のひらめきから生まれた便利グッズ。しかし、商品化までにはたくさんの壁がありました。
「見積もり(をしてくれるメーカー)は本当に探しましたね。信用とか、あとは量が作れるか作れないかみたいなことを判断されるんだと思う」
専業主婦という肩書では、商品の生産を担う工場になかなか取り合ってもらえず、商品化まで3年もの歳月がかかったといいます。
その中でも特に苦労したのが…。
「特許を取得したんですけれども、金をかけたくなくて自力で書いたんですね」
「(Q.特許って取るの大変ですよね?)すごく大変で書類も何十枚ってなるので、うち家族がいるので、早朝4時とかに起きて一人で書いてました」
梅澤国際特許事務所によると、個人発明家の9割以上が自分で取得できないと言われる特許。村松さんは膨大な資料をほぼ一人で作成し、3度目の出願でようやく取得できたと言います。
「起業前は本当に一人で色々やっていたんですけど。今一緒にやっているメンバーと出会って…」
今では定期的に仲間とイベントに商品を出展し、1回でおよそ20万円の利益を得ることもあるそうです。
「本当にみんなが助け合っている仲間なんですよね。本当に人生の宝みたいな感じですかね。新たな第二の人生が始まったなというふうに感じます」
(2026年01月15日放送分より)
[テレ朝NEWS] https://news.tv-asahi.co.jp
“第二の人生”シニア世代の起業が増加 8年で売上10倍…1000万円到達も 成功のワケは【羽鳥慎一モーニングショー】(2026年1月15日)
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