アメリカのトランプ大統領が、来月1日から日本に対して25%の関税を課すと明らかにしました。3カ月間、7度にわたって交渉を重ねてきた日本政府。成果は実らなかったということなのでしょうか。
■“失礼”な書簡 総理「誠に遺憾」
トランプ大統領の発表から1時間後、報道官は用紙数枚を手に会見場にやってきました。
ホワイトハウス レビット報道官
「大統領の署名入りの書簡がこちらです。韓国の大統領宛てに送られるもので、直筆の署名入りです。こちらは日本の総理宛てです。両国には8月1日から25%の関税率が適用されます」
25%というのは、各国一律の税率10%に加え、15%が加わったもの。以前提示された24%から1%上積みされた形です。先週は“30~35%”という数字を公言していたことを考えると、最悪の事態だけは避けられたのかもしれません。ただ、書簡を見ると、丁寧な言葉遣いながら力関係を誇示するような表現も目につきます。
日本宛ての書簡から
「日本には、群を抜いて世界一の市場であり非凡なるアメリカ経済にぜひご参入いただきたい。8月1日より、我々はアメリカに輸出されるあらゆる日本製品に、わずかながら25%の関税を課します。この25%という数字は、貴国との貿易赤字の解消に必要な数値をはるかに下回ることをご理解いただきたい。そちらが関税率を引き上げる場合“その引き上げ分”を25%の関税に上乗せします」
このやり方に日本側は。
石破茂総理大臣
「関税率の引き上げを発表したことは誠に遺憾であります」
自民党 小野寺五典政調会長
「手紙1枚で通告をするということは、同盟国に対して大変失礼な行為。強い憤りを感じております」
交渉にあたってきた赤沢大臣は、ラトニック商務長官に電話で直接こう伝えたといいます。
日米関税交渉を担当 赤沢亮正大臣
「今回1%とはいえ税率が上がったり、いずれについても遺憾であるとの旨は、ラトニック商務長官にもお伝えしているところです」
■日本が“標的”の背景は
今回、トランプ大統領が書簡を送ったのは、アジアを中心に14カ国です。ほとんどが途上国であり、アメリカとの貿易額が大きくない国ばかり。日本と韓国だけかなり異質な存在です。なぜ矢面に立たされたのでしょうか。
上智大学 前嶋和弘教授
「日本と韓国は最初に折れるだろうと“与しやすい相手”だとみていたが、そうではなかった。特に日本と早く妥協することで、それを一種モデルとして他の国とも有利な交渉をしようと思ったが全然そうならず。日本はアメリカの貿易赤字に対して象徴的な存在。まず『日本を叩きたい』というところがあった」
トランプ政権は、関税措置を停止する90日間で、90カ国と貿易協定を結ぶ算段だったと言われています。その弾みをつけるため、日本と1番に交渉をまとめたかったが、うまくいかなかった。これが今回の措置の背景だと指摘されています。
ホワイトハウス レビット報道官
(Q.日本と韓国は“ウザい”から選ばれた)
「それは大統領が特権で選んだ国々です」
■期限の“延期”で交渉余地も
一方で、注目すべき別の点もあります。今月9日に発動されるはずだった関税が来月1日に延期されたことです。“もう関税一時停止の延長はしない”と言っていたのはトランプ大統領本人でしたが。
アメリカ トランプ大統領
「『これで最後』と言いたいが、他に良い案があれば交渉可能だ」
(Q.8月1日が期限で確定ですか)
「確定と言いたいが100%ではない」
これを日本側は交渉継続のサインだと受け取っているようです。
日米関税交渉を担当 赤沢亮正大臣
「トランプ大統領が最近発信した30%や35%ではなく、事実上“据え置き”と言っていいものであり、協議の期限を延長するものです」
小泉進次郎農水大臣
「最大のポイントは“交渉続行”ということだと思う。8月1日で100%確定かというと、そういうこともないと」
マーケットも同様の反応です。書簡が発表された後も、日経平均株価は値を下げるどころか上げています。ただ、楽観視できる話ではないのも事実です。この3カ月で、日本はアメリカ産農作物や液化天然ガスの輸入拡大、輸入自動車の安全審査の簡略化に、砕氷船技術の提供など、可能な案はすでに提示してきています。今後の交渉に向けた好材料があるという話も聞こえてきません。この局面に、日本はどう向き合えばいいのでしょうか。
■日米交渉の今後どうなる?
梶川幸司ワシントン支局長に聞きます。
(Q.日米交渉の今後どうなりそうですか)
梶川幸司ワシントン支局長
「交渉期限は延長されましたが、この先、簡単な交渉ではないと思います。トランプ政権が当初、日本を最初の交渉相手に選んだのは、同盟国でもあり、長年の通商交渉の蓄積もありますから、比較的スムーズに合意できるという打算があったはずです。ただ、関税によって貿易赤字の削減や、製造業の復活を実現するというトランプ大統領の強いこだわりからすれば、日本が求めている自動車関税の見直しで大きく譲歩することはできません。今回、日本に25%と、4月の24%から税率を1ポイント引き上げたのは、トランプ大統領が自分が望んでいるように交渉が進んでいないことへの不満の表れと言えます。交渉が難航しているのは日本だけではありませんが、8月1日まで時間稼ぎができたとはいえ、特に自動車で折り合うのは非常に難しいことだと思われます」
(Q.交渉に強気のトランプ大統領ですが、その背景には何がありますか)
ワシントン支局長 梶川幸司記者
「アメリカ国内の状況を見てみますと、関税による物価の上昇はまだ本格的に始まっていませんし、ガソリン価格は去年より低いままです。国民の生活実感として、今のところ、関税によるマイナスの影響が強く現れているわけではありません。また、これまでトランプ氏の“ブレーキ役”を果たしてきた金融市場を見ても、7日の株価は下がりましたが、4月と比べて、全体としては落ち着きを取り戻しています。アメリカと中国との貿易戦争が先月までの協議の結果、なんとか一時休戦に持ち込むことができたことも、マーケットに安心感をもたらしていると思います。関税による経済の先行き不透明感はありますが、足元の状況だけを見ると今、逆風が吹いているわけではありません。これがトランプ大統領を強気にさせている背景の1つになっていると思います」
■赤沢大臣2度目の電話協議準備
政治部官邸キャップ・千々岩森生記者に聞きます。
(Q.強気の姿勢を崩さないトランプ大統領ですが、総理官邸はどう対応しますか)
政治部官邸キャップ 千々岩森生記者
「まず速報です。赤沢大臣は8日にラトニック商務長官と電話会談をしていますが、2度目の協議の準備をしているという情報が入ってきました。トランプ大統領の書簡ですが、交渉関係者を取材すると、最悪の事態は避けられたと。本来なら今月9日が期限だったところが、8月1日まで延長されて交渉の余地ができたという見方も出ています。政府では、このポジティブな要素をあえて強調している側面もありそうです。それほど光が見えていません。どんなパッケージを提案してもトランプ大統領はイエスと言わない。アメリカは日本が参院選の後に妥協案を示すと見ているかもしれませんが、政府内を取材していても妙案や隠し玉があるようにはみえません」
(Q.妙案・隠し玉もないとなると、今後の交渉はどうしていきますか)
政治部官邸キャップ 千々岩森生記者
「トランプ大統領が求めるのはシンプルで、貿易赤字の解消。日本が大量にアメリカの車を買うとか、コメを含めたアメリカの農産物の関税をゼロにするとなれば話は簡単ですが、そんなことは不可能です。日本の国益へのダメージをいかに減らすかという交渉を続けています。担当者からは、8月1日までに妥結できない場合は、25%に上がったうえで、さらに交渉を続ける可能性もあると。むしろ期限前に無理な妥協をする方が日本の将来にとってダメージが大きいのではないかという声も聞こえ始めています」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
[テレ朝NEWS] https://news.tv-asahi.co.jp
【報ステ解説】今後どうなる?日本を“標的”のワケは…“トランプ関税”日本に25%【報道ステーション】(2025年7月8日)
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