アメリカのトランプ大統領がイランへの攻撃延期を表明したことに、イラン側は時間稼ぎだと反発を強めています。イランへの攻撃宣言は単なる脅しだったのでしょうか?今後どのような展開を見せるのか?中東情勢に詳しい慶應義塾大学大学院教授の田中浩一郎教授の解説です。
アメリカのトランプ大統領は、日本時間の22日午前8時44分、SNSに「48時間以内にイランがホルムズ海峡を完全に開放しなければ、さまざまな発電所を攻撃する」と投稿し、イランのエネルギー施設への攻撃を示唆していました。
これに対しイラン側は、もし発電所などに攻撃を受けた場合、ホルムズ海峡の完全封鎖やペルシャ湾への機雷敷設を予告していました。
トランプ大統領は、48時間が経過する前の日本時間23日午後8時23分、「イランの発電所への攻撃を5日間延期すると指示した」とSNSで表明しました。トランプ大統領によると、「2日間にわたってイランと生産的な対話を行った」ということで、その対話の中でイランが核兵器を保有しないことなど主要な点で一致したとしています。
ところが、イラン外務省によると「過去24日間の戦争中にアメリカとのいかなる交渉・対話も行われていない」と、トランプ大統領の言い分を真っ向から否定しています。
こうしたなか、イスラエルのネタニヤフ首相は「トランプ大統領と協議した。我々はイランとレバノンへの攻撃を続けている」として、今後も攻撃を継続する姿勢を示しています。
(Q.主張が食い違っているが、誰が本当のことを言っている?)
田中教授
「ここまでの経緯を見ると、立場が揺らいでないのはイランとイスラエルです。イランは不法な攻撃で侵略を受けている、徹底的に戦うという立場を貫いています。イスラエルはネタニヤフ首相を中心に、イランの体制転換を果たすまで戦い続けるということでブレていません」
「トランプ大統領、アメリカが1番ブレブレで、徹底的にやると言ってみたり、どこかで落としどころを探ろうとしたり、今の体制が残ってもいいと言ってみたり。何をやろうとしているのかが1番わからない」
(Q.5日間延期の狙いは?)
田中教授
「ひとつは原油価格を沈静化させるために、和平交渉がうまくいってるとか、停戦が近いとかというニュアンスを出しているわけです。もうひとつは、海兵隊を使った上陸作戦の計画を進めているわけですが、この部隊がまだ到達していないので、何らかの攻撃を起こすには少し時間が足りない、そのため時間稼ぎの要素もあると見ています」
田中教授によると、アメリカのトランプ大統領は、イランの最高指導者ハメネイ師を排除したので、「このメンツを保ったままこの戦争を終わらせたい」と考えているのではないかということです。
次にイランは「トランプ大統領は全く信用できない。まずはアメリカがイスラエルの攻撃を抑えた上で、アメリカがイスラエルの首に鈴をつけるべきだ」との思惑。
イスラエルは「イランの体制に関わる全ての人間を排除する。トランプ大統領の言うことを聞くつもりはない」と考えているのではということです。
(Q.それぞれの思惑が全く違う方向をむいている?)
田中教授
「トランプ大統領は自分が利益を上げればいいという考え方で、原油価格が下がるとか、多くの国が賛同してくれるとか、そういった出口を模索はするんですが、なかなかそれが見えてこないし、むしろ情勢は混迷を深めている」
「一方で、どこかで妥協しようとすると、ネタニヤフ首相に引っ張り戻される。トランプ大統領がどこで決着をつけようとしているかが前後左右にブレブレですから、我々が外から見ていても、何をしたいのかよくわからない」
「ただ、アメリカ側も海兵隊まで送り出しているし、空挺団まで派遣するという話も出てきています。上陸作戦というものに一旦手をつけてしまうと、イラン側の反発はますます強くなるので、イランの周辺に対する攻撃や、そこで生じる被害がさらに拡大してしまうでしょうし、ホルムズ海峡に機雷が敷設されるというような事態にまで、意外と早く展開してしまうかもしれません」
(Q.既存の体制を壊したところで、その後の統治は武力や組織力があるところが担うのが国際社会の現実としてある。イランもそうなる可能性が高い?)
田中教授
「イラン国内で新しい秩序がどういう形で生まれ得るのかを考えると、組織的にも、実際に暴力装置としての機能も果たしている革命防衛隊が全権を掌握するような動きは密かに進んでいると見ています」
「最終的にイランの既存の体制を潰したとしても、後に生まれる体制が軍政になって、それがイランの人々にとって万々歳なのかというと、おそらく彼らが望んでいるような体制でもないし、また周辺に対する圧力がイランからなくなることもないと思います」
(Q.戦争が長引くほど、イランに有利に働く?)
田中教授
「アフガニスタンのケースもそうでしたが、そこで多くのお金を注ぐことで、アメリカ国民にとって受けが悪くなり、最後は手を引いて地元の人たちに任せたら、元の木阿弥になってしまうことも考えられる」
「また軍がどういう行動をとるのかについても、不確定な部分が多い。過渡的な間にも多くの不幸なことが起こり得る、その要素をどんどん増やしている。問題の種をより多くまいていってるという状況です」
(Q.アメリカとイランの間に入って停戦に導いていくような存在は?)
田中教授
「一瞬、変な動きがあったのがロシアのプーチン大統領です。ロシアのウクライナ侵攻に関してはアメリカが仲介しようとしていて、イスラエルとアメリカによるイラン侵攻に関しては、プーチン大統領が乗り出してくると」
「変な形でトランプ大統領がプーチン大統領と握ってしまうと、これはヨーロッパにとってもとんでもないことになりますし、イランの周辺の国々から見てもとんでもないことになるんだろうなと思われます」
・田中浩一郎さん
慶應義塾大学大学院 教授 元在イラン日本大使館専門調査員
中東の国際関係とエネルギー安全保障が専門
(『newsおかえり』3月24日放送)
「5日間延期」は上陸作戦までの時間稼ぎか トランプ大統領「生産的な対話」と表明もイランが真っ向から否定 3カ国それぞれの思惑は【専門家解説】
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