イラン情勢が緊迫する中、行われた日米首脳会談。高市総理にとって、まさに正念場の会談となりました。今回の会談や今後の中東情勢について、アメリカ政治に詳しい同志社大学大学院の三牧聖子教授に聞きました。
今回の首脳会談では、日本側が用意した“交渉カード”がありました。会談終了後、高市総理は「アメリカ産エネルギーの生産拡大に、日米でともに取り組んでいくことを確認した。また、日本がアメリカから調達する原油を備蓄する共同事業を実現したい旨をトランプ大統領に伝えた」と述べました。
現在の日本の原油輸入先を見ると、1月時点で中東からの輸入が95.1%を占め、アメリカからはわずか3.6%にとどまっています。
三牧教授は「大きな案件を決めて会談に臨んだことは、ポイントが高い」と指摘します。
(Qアメリカ側は評価している?)
三牧教授:今回ホルムズ海峡の問題で、日本はトランプ大統領の要請に「応じられない」立場だった。それに対し、高市総理は『エネルギー産業に日本はこれだけ貢献しますよ』と提案した。タイミングとしても、規模感としても、トランプ氏の要請を抑えた1つの背景になった。
また、日米合意に基づく5500億ドル(約87兆円)規模の対米投資について、共同文書を発表しました。第2弾として、「次世代原発・小型原子炉の建設」「天然ガス発施設の建設」が盛り込まれ、投資総額は730億ドル(11兆円超)となる見込みです。
トランプ大統領はなぜ、対米投資を重視しているのでしょうか。三牧教授は「アメリカ国民は物価高に大きな不満を抱えていて、トランプ政権の支持率低下につながっている。トランプ大統領は中間選挙で重要な州(オハイオ州・テキサス州・ジョージア州など)に、日本の投資をつぎ込んで選挙対策にしたい」といいます。
三牧教授:もし次の中間選挙で負けてしまうと、3度目の弾劾にかけられるかもしれない。そのためトランプ大統領は、中間選挙で絶対に勝ちたい。ということで、なりふり構わず「やれることは全部やる」スタンスのようです。
現在、アメリカ国内ではトランプ関税による物価高が深刻化しています。米シンクタンクの調査によると、トランプ関税によって、去年1年間でアメリカ国民の負担が1000ドル(約15万円)増加したということです。
さらに、今回のイラン攻撃による原油高も直撃しています。アメリカ・フロリダ州で取材をすると、「ここ数ヵ月で2倍近くになった」ということです。
三牧教授:物価高は、関税のせいだったり、戦争のせいだったり、いずれもトランプ大統領の政策による影響だとアメリカ国民が気づいてきている。1年前のような勢いが、トランプ大統領からなくなっている。
CNNの世論調査によると、イランへの軍事作戦に「賛成」が41%、「反対」が59%でした。また、トランプ大統領の岩盤支持層「MAGA」の一部からも「イラン国民解放のために投票したわけではない」などと批判が出ています。
三牧教授は「開戦初期にここまで支持されていないのは異例」といいます。
三牧教授:アメリカは今年初めベネズエラに軍事行動したが、それは1日で終わり、アメリカ側の犠牲もなかった。イラン攻撃もこの程度で想定していたが、ここまで長期化するとは思ってなかった。さらに、経済にも影響があると思っていなかった。アメリカの歴史でいろんな軍事作戦と比べても、『最も支持されないで始まった軍事作戦』と言っていいかもしれない。
こうした状況のトランプ大統領の胸中について、三牧教授は「トランプ大統領も、中間選挙や経済回復のために早期停戦した方がいいことはわかっているが、落としどころがわからなくなっている。イランの無条件降伏や体制崩壊という成果を得るために、さらに激しい手段をとる可能性もある」といいます。
三牧教授:トランプ大統領としては、『軍事的に成功しました』ということを何か示さなきゃいけない。ただイランは徹底して抵抗する姿勢をみせている。体制転換や無条件降伏は非現実的となっている。
イラン攻撃に対する各国の姿勢です。
イギリス・スターマー首相「戦争に関わることはない」
ドイツ・メルツ首相「NATOは防衛同盟であり、介入同盟ではない」
フランス・マクロン大統領「ホルムズ海峡の封鎖解除や解放作戦に参加することは決してない」
韓国大統領府「アメリカと緊密に意思疎通し、慎重に検討し判断する」
オーストラリア交通担当相「重要性は認識しているが、関与する予定はない」
今回の首脳会談で、三牧教授は「高市総理が対面で『艦船派遣に応じられない』と伝えたことは、『他国が戦争に巻き込まれてはならない』という機運を高めた」と指摘します。
最後に、日本が進むべき道について、三牧教授は「高市総理がトランプ大統領の要求になびかず、事態の鎮静化を求めたことには大きな意味がある。各国が軍事作戦から距離を置き、早期停戦のために連携しなければならない」としています。
三牧教授:アメリカに一国だけはでは物申せなくても、同盟国で歩調を揃えて、1日も早い停戦と、ホルムズ海峡の物流正常化を実現してほしい。その点から見ると、今回の首脳会談で高市総理は正しい訴え方をしたと思う。
(「newsおかえり」2026年3月20日放送分より)
世界が注目した日米首脳会談で「高市総理は正しい訴え方をした」 物価高に苦しむアメリカ国民 トランプ大統領の支持率低下 広がる“イラン攻撃反対”【きょうの深掘り】
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