大阪府の公立高校で11日、一般入試が実施されました。今年の志願者数は、現在の入試制度が導入されて以来、過去最少に。府内にある全日制の公立高校126校のうち、4割以上となる55校では定員割れしています。
今後、公立離れは進んでいくのか?公立高校が減るとどんなことが起きるのか?長年、教育現場を取材する朝日新聞ネットワーク報道本部の教育キャップ、前田智記者に聞きました。
大阪府教育庁によりますと、11日、府内全日制の公立高校126校が一般選抜試験を実施し、去年より約580人少ない約3万3400人の受験生が出願しました。全日制公立高校の志願者数は、現行の入試制度になった2016年度以降最も少なく、55校が定員割れしているということです。平均倍率も 1.05倍と低水準でした。
前田記者によりますと、「伝統校」「人口が多い北摂や大阪市内にある」「進学実績が高い」といった特徴のある公立高校の倍率は高いが、私立に比べると少ない状況だということです。
この“公立高校離れ”は大阪だけの現象ではありません。全国の公立高校の数は、1989年に4183校あったのが、2025年には3426校に。私立高校の数はほぼ横ばいであるのに対し、公立高校は757校減となっています。
なぜ公立高校の人気が下がっているのでしょうか。前田記者は2つ理由を挙げます。
理由1:少子化の影響
文科省によると、全日制・定時制に通う高校生の数は、1990年に約564万人だったのが、2025年は約287万人と、半数近くにまで減っています。
理由2:2026年度から始まる高校授業料無償化の影響
専門性の高い学科や整った設備が揃う私立高校への人気が高まる傾向になっている。前田記者は「現場の教師に話を聞くと、“公立志向”はまだまだあるが、私立を第1志望とする生徒が増えている」といいます。
“公立離れ”が進んでいる大阪府の現状をみていきます。
まず大阪府の高校授業料無償化について。2025年度の2・3年生の授業料は、年間63万円まで国と府が負担します。63万円を超える分に関して、年収800万円未満の世帯は学校が負担し、年収800万円以上の世帯は保護者が負担します。これが2026年度から、世帯の所得に関係なく年間63万円を超える授業料は学校負担となり、保護者等が負担する授業料は0円になります。
大阪府では、定員割れが3年以上続き、改善の見込みがないと判断された府立学校は統廃合の検討対象になることが条例で定められています。大阪府は今後も少子化が続くとみて、2040年には府立高校の数を現在の136校から104校になると試算しています。
この“3年ルール”により、門真西高校(門真市)と懐風館高校(羽曳野市)の2校が2027年度の生徒募集を停止。2029年度末に閉校となる予定です。現在、阪南市など府内10の自治体に府立高校がない状態になっていて、懐風館高校が閉校すると羽曳野市内にある府立高校はゼロとなります。番組調べでは、今年度で3年連続定員割れとなった高校が16校ありました。
前田記者は「やはり公立高校は経済的負担が少ない。たとえば授業料以外にかかる費用で、公立と私立では大きな差がある」といいます。文科省のデータによると、入学金や修学旅行費、学校への納付金など、年間負担額は24万円以上の差があることになります。
さまざまな社会的立場に置かれた人の受け皿となっている学校もあります。府立松原高校は、1978年から障がいのある生徒を“準高生”として受け入れています。現在は、知的障がいのある生徒を受け入れる「自立支援コース」となっています。前田記者は「松原高校は今年、定員割れだが、支援の必要な人が地元の学校へ通学できるというメリットがある」といいます。
大阪狭山市は23年、府立狭山高校と包括連携協定を締結しています。前田記者は「地元のイベントに参加してもらうなど、地域で地元の公立高校を盛り上げようと動いている自治体もある。公立高校だからこその動き」と話します。
前田記者
「高齢化が進む中、高校があること自体が地域の活力になる側面がある。例えば災害のときに、高校生が活躍したという話もある。大阪狭山市以外でも、こうした動きがもっと出てくればいい」
公立高校の今後について、前田記者は「時代の流れで公立校の閉校はあるだろう。ただ、地域と密接な関係にある学校は、定員割れかどうかでははかれない価値がある。閉校にするなら、地域とともに学校が培ってきたものをどう継承し育てていくかが重要」と指摘します。
(「newsおかえり」2026年3月13日放送分より)
高校の授業料無償化で”公立離れ”がさらに加速? 大阪は独自の”3年ルール”で定員割れが続くと統廃合の検討対象に【記者解説】
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