先週、各地で雪に見舞われた近畿地方。今後も厳しい寒さが予想される中、気をつけなければいけないのが「低体温症」です。その背景にあるのが、「部屋の温度の低さ」です。部屋の寒さに潜む危険など、建築・都市環境工学が専門の慶應義塾大学・伊香賀俊治名誉教授に聞きました。
■いま注意すべき「低体温症」とは? 「本人には自覚がない場合も」
総務省によりますと、低体温症とは臓器などの深部体温が35℃以下の状態になることをいいます。重度の場合、筋硬直・呼吸停止・心停止などの症状を引き起こすということです。
厚生労働省の人口動態統計によると、熱中症による過去10年の死者数は1万971人。これに対し低体温症は1万2124人と、熱中症による死者数を上回っています。
見た目のサインとして、伊香賀氏は「唇の色が紫になる」「顔面蒼白になる」などの症状があるといい、「本人には自覚がない場合も多く、気づきにくい」としています。
対処法として、「下半身を温める」「暖かい服を着る」「暖かい飲み物を飲む」などが挙げられます。
低体温症に関する救急統計をみていきます。郡山地方広域消防組合によりますと、2015 年から2024年までの10年間で、低体温症で搬送された人の年齢の85.3%が65歳以上の高齢者です。発生場所の屋内外別でみると「屋内」が79.7%と8割近い数字となっています。
伊香賀氏は「高齢者の方が、耐熱性能が低い古い住宅に住んでいる。また、『冬は寒いのが当たり前』『暖房代がもったいない』と思っている高齢者が多い」と指摘します。
■原因の1つに「日本には断熱性能が悪い家が多い」
低体温症の原因の1つとして、伊香賀氏は「日本の家の寒さ」を挙げています。
2190世帯を対象とした調査では、日本の冬季の平均室温は、リビングが16.8℃、脱衣場が13.0、寝室が12.8℃となっています。いずれもWHO=世界保健機関が推奨する18℃以上に届いていません。
日本の建物の断熱性能を示す基準(画像)です。この数字は、建物からの熱の逃げやすさを示し、数字が低いほど熱が逃げにくくなります。伊香賀氏は「日本の住宅の約8割が断熱等級3以下で、等級1(無断熱)の家もある。WHO推奨の18℃以上を満たしているのは1割程度」と指摘します。
こうした中、去年4月、改正建築物省エネ法が施行され、すべての新築住宅に断熱等級4以上が義務化されました。
(Qこれまでは“業者任せ”だった?)
伊香賀氏:そうです。「予算が少ないので安くしてほしい」と伝えると、まず断熱材から削られてしまっていた。
室温が低いと、どのような健康リスクがあるのでしょうか。下記のようなことが挙げられます。
・血圧が上昇(女性や高齢者ほど血圧が高くなる傾向がある)
・悪玉コレステロールや心電図での異常所見が多くなる。
・睡眠の質が低下
・住宅内での転倒リスク(床付近が12℃未満のとき、18℃のときと比べて室内転倒が2倍に)
伊香賀氏は「日本では、こたつは使っても、家全体を暖める暖房は節約のため使わない人が多い」と指摘します。
家庭用エネルギー消費量の国際比較のグラフをみると、エネルギー消費量が日本は他の先進国に比べて少ないのがわかります。なかでも暖房のエネルギー消費量は、他の先進国と比べ5分の1程度となっています。
伊香賀氏:日本でも北海道に限定するとドイツやフランス並みに暖房を使っているが、それ以外の地域は数字の通りとなっている。
■「日本の家づくりは、断熱よりも耐震に力を入れてきた」
伊香賀氏は「日本の家づくりは、断熱よりも耐震に力を入れてきた」といいます。
2018年の調査で、「住宅および居住環境に関して重要と思う項目」について回答を求めたところ、「地震のときの安全性」は4位で33.7%。これに対し、「断熱性」は23位の10.9%でした。
伊香賀氏:昔から耐震基準を満たさないと家を建てられなかったが、断熱については基準を満たさなくても建てることができた。
最後に、断熱を強化するためには、どうすればいいのでしょうか。まず、すぐにできることとして、「窓に気泡緩衝材を貼る」。これだけで高血圧の人の血圧上昇が抑えられた例もあるということです。
そして、伊香賀氏は「断熱リフォームの補助金制度の活用」を挙げます。
伊香賀氏:国と自治体、あわせて最大8割の補助をしているところもある。その補助金制度の対象期間なのか、ぜひご確認いただきたい。
(「newsおかえり」2026年2月2日放送分より)
「日本の家は寒すぎる」低体温症発生の約8割が屋内 すぐにできる対策は 専門家解説【きょうの深掘り】
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