真冬の寒さが襲う中、戦いの火ぶたが切られた衆議院選挙。選挙期間と受験シーズンが重なり、SNSではこんな声も。
「期日前投票の期間は受験勉強の追い込み期だし、人混みで病気をもらいたくない」
「受験シーズンに選挙やるなら、投票はネットでできるようにして」
若者の投票率を上げるには?ネット投票は導入できないの?日本の選挙制度への疑問を、政治学者で大阪経済大学の秦正樹准教授と“深掘り”します。
■若者の投票率に影響するのは「選挙区で勝てそうという気持ち」
2016年の公職選挙法改正で、選挙権年齢が18歳以上に引き下げられてから、ことしで10年になります。ただ、国政選挙の投票率の推移をみると、若年層の投票率は全体に比べて低い状況が続いています。
2024年の衆院選の投票率
18歳 48.32%
19歳 30.43%
20~24歳 30.99%
25~29歳 38.19%
秦准教授によると、18歳は授業などで政治の話題が身近になるため投票率が高くなる一方で、19~24歳は進学や就職に伴い、住民票を移さずに転居する人が多く、政治への関心も薄れやすくなります。25〜29歳になると社会との関わりが増えて、政治への関心が高まることが投票率に影響しているのではないかということです。
しかし、去年の参院選では若者の投票率が軒並み上昇しました。
2025年の参院選の投票率
18歳 49.38%
19歳 41.04%
20~24歳 42.60%
25~29歳 51.97%
秦准教授は、若者の投票率に影響するのは「勝てそうかどうか」「自分の利益につながるかどうか」だと指摘します。参院選は複数人が当選する選挙区が多いため、応援している政治家がトップでなくても当選する可能性があります。若者の生活に直結する争点が示されていることも重要だということです。
■直情型?合意型?若者が「有能」と感じる政治家には特徴がある
秦准教授
「去年の参院選で大阪は4人、京都は2人、兵庫は3人と複数人が当選しました。若者の多い都市部は選挙区の定数が多くなるので、いわゆる“ワンチャン狙い”ができます。大阪では参政党が3位で通りましたが、もし小選挙区なら1位しか通らないので、維新しか通らなかった可能性があります。3番手・4番手でもまだ勝てるとなると、行く意味があると感じるということです」
「政党を比較したときに、自分が欲しいと思う利益について大きな差があるという状況が大事です。例えば自民党と中道改革連合の打ち出している政策がどう違うんだろうという状態は、どちらに入れて良いかわからない状態です。しかし、去年の参院選で若者の支持率が高かった国民民主党や参政党は、減税や外国人問題など、他の政党にはない政策があって、利益の差がわかりやすかったと思います」
秦准教授によると、若者が「有能」と感じる政治家にはある特徴があるといいます。
荻上チキさんが代表理事を務める社会調査支援機構チキラボでは、政治家を評価する基準として、誤解を恐れず強い言葉で論破するような、ルールよりも信念を貫く能力を重視する「直情型」と、社会問題を説明する能力や幅広い合意を得る能力を重視する「合意型」の2つのタイプに分けて、若者が「有能」と感じる政治家の特徴について調査しました。
18歳〜20代の若者については「合意型」が低く、「直情型」が高い部分に位置しています。こうした調査から、去年の参院選ではSNSで強くシンプルなメッセージを発する政治家が多く登場したことで、若者の投票率アップにつながったのではないかということです。
今回の衆院選について、秦准教授は「参院選と違い、衆院選は小選挙区と比例代表なので『勝てそう』の気持ちが下がることに加えて、受験シーズンと重なって投票に行くコストが上がり『自分の利益』と反する人が多いため、若者の投票率は前回より下がるかもしれない」と分析しています。
■投票用紙に「民主党」と書いたらどうなる?そもそも自分で書くのは”非効率”
立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」をめぐり、「投票用紙に『民主党』と書いたらどうなるのか」という疑問が上がっています。
過去4回の国政選挙では、立憲民主党も国民民主党も略称を「民主党」で届け出。これまで「民主党」と書かれた票は案分で割り振られていました。今回の選挙で立憲民主党は衆院選には出ないので、「民主党」と書かれた票はすべて国民民主党の票となります。
秦准教授は「そもそも投票用紙に“手書き”は効率が悪い」と指摘します。
韓国では、専用の判を押して投票します。フランスでは、政党や候補者名が書かれた投票用紙が積まれていて、自分が投票したい候補の紙を選んで封筒に入れて投函する方法がとられています。アメリカはマークシート式で機械が自動で集計する形式で、国によって様々な方法がとられています。
秦准教授
「先ほどの案分票や、氏名を◯で囲んでいたら無効など、全て公職選挙法上の規定に基づいていますが、率直に言って一般感覚からするとよくわかりませんよね。私たちにとって何が一番効率的かというと『記号式』です。日本のように『自記式』でやっている国は非常に少ないです。マークシートとかであれば集計もすぐ終わりますから、夜の1時2時まで待つことはなくなっていくと思います。もちろん自記式であろうがマークシートであろうが、エラーはあり得ますが、ヒューマンエラーより機械のエラーの方が少ないと考えられます」
■電子・ネット投票はなぜ進まない?「便利なシステムを止めているのは私たち自身」
国内で電子投票やネット投票はなぜ進まないのでしょうか。
実は2002年、岡山の新見市長選で全国初の電子投票が行われました。開票時間は4時間短縮され、当日分は25分で終了しました。
しかし翌年、岐阜県可児市議選では最大で1時間23分投票できないトラブルがあり、投票せず帰る人も。最高裁で選挙の無効が確定し、後に再選挙することになりました。
秦准教授
「(Q.海外でも電子投票は普及していませんか)エストニアなど一部の国ではしていますが、多くの国が今でもオンライン以外の方法でしています。やはり、こうした方法を僕たち自身が信用できるかが関わってきます。オンラインでやりたいという声は多いですが、一方でプログラムを作っている会社がどうだとか、特定の政党に有利な仕組みじゃないかとか疑念をもたれるおそれはあります。今でも期日前の投票は書き換えられてるとか、開票のときにいじられているとか、そういう陰謀論がたくさんあります。そうした中で、ここまで大きい選挙制度の変更をしたら、みんなが信用できるでしょうか。便利になるシステムを止めているのは私たち自身です」
■駅前など便利な場所に投票所を作れば「投票率は上がる」
では、投票率を上げるためにはどうすれば良いのでしょうか。秦准教授は、駅前など便利なところに投票所を設けたり、韓国のように選挙区以外でも全国どこでも投票できるようにするなどの方法を提案します。
(秦准教授)
「都構想の住民投票で臨時投票所をいくつかの区で設けたところ、投票率が上がったことがありました。ただ、便利な場所でないと効果がないので、例えば大阪駅です。一方で、大阪駅には京都、兵庫など様々なところから人が集まるので、選挙区が違って投票できないこともあり得ます。システムを統合させるしかないので、そういう仕組みも徐々にできつつありますが、もっと拡大すれば投票に行きやすくなると思います」
(「newsおかえり」2026年1月28日放送分より)
【衆院選】若者が“有能”と感じる政治家はルールよりも信念を貫く「直情型」 投票率を上げるには「選挙区で勝てそうという気持ち」が重要 若者の投票行動を政治学者が分析【きょうの深掘り】
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