朝日新聞経済部の野口陽記者が執筆した記事はこちらから読めます!
https://www.asahi.com/articles/ASTD42CWVTD4PLFA005M.html
福井県の敦賀駅から新大阪までの延伸が決まっている北陸新幹線。小浜市から京都市を通るルートで計画が進むはずでしたが、地元の反対もあり事態は混迷。
こうした声を受け、維新は「小浜・京都ルート」を含めた8つのルート案を提示し、15日の整備委員会で改めて検討することが決まりました。
“振り出し”に戻った議論。今後の計画はどうなるのでしょうか?取材を続ける朝日新聞経済部記者の野口陽さんと“深掘り”します。
■敦賀からどこを通って大阪へ? 決まらないルート
現在、北陸新幹線は福井県の敦賀駅まで開業。これまでの自民・公明での議論では、福井県小浜市から京都市の地下を通り、新大阪まで延伸するルートが決まっていましたが、沿線自治体から強い不安の声が続出し、計画通りに工事が進むか不透明な状況になっています。
12日には、与党のプロジェクトチームの会合に公明に代わって維新が参加し、小浜・京都ルートを含む8つのルートでの再検討を提案しました。
■議論が白紙となった“4つのきっかけ”
北陸新幹線の延伸ルートをめぐり、議論が“白紙”となるに至った“4つのきっかけ”があります。
1つめは「地下水への影響をめぐる不安」です。
去年8月、国交省は京都駅の地下に乗り入れる「東西ルート」「南北ルート」、JR桂川駅付近の地下に新駅を作る「桂川ルート」の3パターンを提案しました。
これに対して、地下水への影響などを懸念する、京都仏教会や酒造組合など、京都市内にある複数の団体がルート見直しなどを求めました。京都仏教会の長澤香静・事務局長は「千年の愚行とならないように」と強調しています。
2つめのきっかけは「膨らむ建設費」です。
2016年度の想定は工期が15年、費用が2.1兆円でしたが、去年8月の試算では「東西ルート」なら工期28年・建設費3.7兆円、「南北ルート」なら工期20年・建設費3.9兆円、「桂川ルート」なら工期26年・建設費3.4兆円になることが示されました。このまま物価上昇が続く場合は、3案とも5兆円前後まで建設費が膨らむと見込まれています。
新幹線の建設費は、JRが施設使用料である「貸付料」を支払った後、残る費用の3分の2を国、3分の1を自治体が負担する仕組みとなっています。
野口さんによると、京都の沿線自治体からは「こんな金額は払えない」と軽減を求める声があがっているということです。
野口さん:
去年8月にこの数値を見て、その後沿線の自治体幹部の方に取材したら、ご自身で計算した上で「うちの自治体財政では生きていけません」という声が聞かれました。
また、京都大学の中川大・名誉教授の試算では、北陸新幹線のルート別の費用対効果は、新幹線着工の目安である「1」を下回っています。
小浜・京都ルートについて、京都駅を通る場合は0.551。JR桂川駅近くを通る場合は0.522と、いずれも国交省が2016年度に試算した1.1を下回りました。
米原ルートについては、乗り換えが必要な場合は1.777、直通で行ける場合は2.024。国交省の試算では2.2でした。
野口さん:
調査の中で中川名誉教授もおっしゃっていますが、要するにこの数字は前提をどうするかで、いくらにでも変動しうる。大事なのは同じ前提でやったときの「小浜・京都ルート」と「米原ルート」の比較です。前提が変わっても数字の差は変わらないので、横の比較をしていただきたいです。
3つめのきっかけは「今年7月の参院選」です。
今年7月の参院選・京都選挙区では「小浜・京都ルート」の議論を牽引してきた自民の西田昌司氏を抑え、維新の新実彰平氏が14万票以上もの差をつけてトップ当選しました。
新実氏は米原ルートへの再検討を訴えており、西田氏は小浜・京都ルートが妥当か再検討する考えを示しました。
野口さん:
12月初めの新幹線の問題を議論する維新のプロジェクトチームの中で、前原誠司さんが「京都府民の民意として小浜・京都ルートは明らかに反対ということだ」とおっしゃっています。もちろん選挙結果は新幹線の問題だけではありませんが、「そういう民意なんだ」と維新としては打ち出しています。
きっかけの4つめは「自維連立政権の誕生」です。
維新は、8つのルートについて費用対効果を算出し、比較検討するべきという考えです。
一方、自民としても新たに連立を組んだ相手の主張をむげにはできないので、結果としてルートの再検討という方向で話が進みました。
■沿線自治体のそれぞれの思惑は…
福井県の思いは…「白紙に戻すなんて無責任」
野口さんによると、沿線の自治体もそれぞれの思惑を抱えているといいます。それぞれ詳しく見ていきます。
まず福井県について今年1月、杉本達治知事(当時)は「国が手をこまねいている間に、工事が進まないと建設費はどんどん上がっていく」として、小浜市までの先行開業について言及しました。これは一体なぜでしょうか。
野口さん:
福井県の真ん中でレールが止まっています。そこから計画通りに繋いでもらうのが福井県にとって一番メリットが大きいです。この前の県議会でも「白紙に戻すなんて無責任だ」「小浜を通さないルートなんて、我々は絶対に同意しない」とかなり強硬に維新案に反発しています。
では、石川県はどう思っているのでしょうか?
石川県は去年の3月、金沢ー敦賀間の開業にともなって特急サンダーバードが大阪ー敦賀間のみになりました。その結果、関西圏や中京圏からの観光客が伸び悩んでしまいました。
野口さんは「石川の政財界は早期の開業のため、小浜・京都ルートにはこだわらない姿勢」とみています。
野口さん:
県内に大きな温泉街があって、関西からの観光客はドル箱です。これまでサンダーバードだったら一本で来れたのが、1回乗り換えないといけなくなり、お客さんの伸びが悪くなってきたので「もういいから早くつないで」という思いがあります。
最後に滋賀県の思惑について。滋賀県の三日月知事は今月5日、「受益に比べて財政的負担が大きすぎる」と米原ルートの開通に反対の立場を示しています。
なぜ財政負担が大きいのでしょうか。
新幹線と並行する在来線はそのままJRが運営することが難しいため、第三セクターにするのが通例です。第三セクターとは国や自治体と民間企業が共同出資する法人です。
仮に米原ルートに決定したら、自治体には新幹線の建設費に加えて、第三セクターへの出費がのしかかるため、滋賀県の大きな負担になってしまうということです。
■北陸新幹線この先どうなる?「振り出しに戻ることは必ずしも悪いことではない」「議論の透明化を」
さて、こうした問題を抱えた中で、開通のめどはいつになるのでしょうか。野口さんは「ルート再検討で着工の見通しも立っていないが、着工したとしても工期は25年以上はかかる」とみています。
ーーQ.今後どういった議論が必要になるのでしょうか?
野口さん:
現状は「振り出しに戻る」ですが、僕は必ずしも悪いことだと思っていません。コストや地下水の面などから、もう一度議論することは必ずしも悪いことではないからです。これまでの議論は自民党の一部の議員によってクローズなところで進められていたので、透明化して皆で議論するべきだと思います。
(「newsおかえり」2025年12月16日放送分より)
北陸新幹線の延伸、ルート選定が“振り出し”に でも「必ずしも悪いことではない」 今後の議論に必要なのは“透明化” 朝日新聞記者が解説【きょうの深掘り】
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